食卓で育む生きる力 2535号(2013/12/16)
その4(終) 腹はひもじくないけど心がひもじい子どもたち 心のひもじさも問題ですが腹のひもじさがないことも問題です
内田産婦人科医院 助産師 内田美智子
ある自治体で、学校歯科医の先生が講演をするに当たって、子どもたちにアンケート調査をしました。設問は2点です。「食事のときに親にしてほしいこと」、そして「食事のときに親にやめてほしいこと」
この回答で多かったもの、何だと思いますか?
一つ目の設問で一番多かった回答は「話を聴いてほしい」です。「今日ね、友だちにこんなこと言われて嫌だったんだよ」とか、「今日ね、学校行きたくないの」というような話をする場所がない、相手がいないんです。
もう一つの設問で一番多かった回答は「時々でいいから冷凍食品を使わないで欲しい」でした。「時々でいいから作ってほしい」と思っているんです。けなげでしょ。
こういう調査もあります。ユニセフ(国際連合児童基金)が「世界中の子どもたちの幸福度調査」をしました。孤独を感じている子どもたち、日本ではどれぐらいいると思いますか?
3人に1人です。
食事を作るということに対して、親は、「忙しい」と「大変」と「面倒臭い」を言わないようにしましょうよ。子育てを差し置いてでもしなければいけないことが本当にあるのかどうか。それが自分の人生にどれだけ意味のあるものなのか、しっかり考えないといけないと思います。
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腹はひもじくはないけど、心のひもじい子どもが今、たくさんいます。心がひもじいことも問題ですが、腹のひもじさがないことも問題です。
朝から晩まで砂糖にまみれていて空腹感がないんです。空腹感がないからご飯がおいしいと思えません。おいしいと思わないから誰にも感謝しません。
こんな状態で子どもを育てていたのでは、物のありがたみや作ってくれた人への感謝なんて、まず分かりません。
便利になり過ぎて、物のありがたみや何かしてくれた人への感謝を教えるきっかけがない。これは大人が原因です。
素直で優しい子どもたちは大人に気を使いながら生きています。
子どもたちに「生まれてきてよかった。生きていてよかった」という気持ちを持ってもらいましょうよ。これから親になるかもしれない若い人は、「生んでくれてありがとう」って言ってもらえる親になる準備をしましょう。
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行動が変わると、人生は必ず変わるようになっています。人生を変えるなんてそう簡単なことではありませんが、ほんのちょっと考え方と行動を変えていくだけで、人生が全く違ったものになり、豊かなものになっていくんです。
ぜひ、行動を変える努力をしてみてください。
子どもに生きる力になるような記憶を残そうと思ったら、手間暇を惜しんではいけません。
今、便利な物がたくさんあります。でも、それを使ったら使った分、違った形で、「あなたは大事な存在なんだ」ということを子どもたちに伝えていかないといけません。そんなことを考えることができる大人になってください。
そして、「こんな大人になってほしい」「こんな親になってほしい」と思う理想像があるんだったら、それは大人がして見せないと子どもたちには伝わりません。
そういうことを意識して、ぜひ食べること、食卓の風景づくりに手を抜かないでいただきたいと思います。
(ひろがれ弁当の日in宮崎実行委員会主催のセミナーより/文責編集部~終わり)