水谷もりひとブログ

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どうやって残そうかと考える

30年近く年前、宮崎にUターンして、
生まれたばかりの長女と妻と3人で1DKのマンションを借り、
フリーターしながらお気楽に暮らしていた。

1年後、2人目を妻が身ごもった。
子どもが2人に・・・。
これは真面目に働かないといけないと思い、
一念発起してハローワークに。
そこで宮崎中央新聞社の求人を見つけ、入社した。

生まれたばかりの次女が加わって4人になり、2DKのアパートに移った。

それまで我が家にあった家財と言えば・・・
一人暮らしの学生が使ってそうな小さな冷蔵庫。
新婚時代に買った洗濯機と乾燥機とシングルサイズのせんべい布団。
そして、長女を出産した際に宮崎市からいただいたお祝い金20万で買った中古のトヨタ車。
それだけだった。

2DKに引っ越して買ったものはテレビとビデオ。
他になにもなかった。

そこになんと食器棚がやってきた。
友だちがくれたのだ。しかも籐の食器棚。
それは心を豊かにしてくれた。

あれから長い年月が経った。

家財はほとんど入れ替わった。
冷蔵庫も洗濯機も車もテレビも。
回りを見回すと、当時のものは何もない。

いや、一つだけあった。
一つだけ。
籐の食器棚だ。
もう古臭くて、色も褪せているが、堂々とキッチンに立っている。

しかし、実は昨日新しい食器棚を買った。
あの古い籐の食器棚をどうするか。
僕は「書棚として使いたい」と主張。
妻は「置く場所がないので捨てよう」と対立。

しかし、我が家では僕は野党だ。

11月4日、新しい食器棚を配達してくる業者が
古い籐の食器棚をもっていくことになった。

これが何とも切なくて・・・。
この25年間、貧しい時代からずっと僕らの食卓と共にあった籐の食器棚。

ふと『北の国から』を思い出した。
両親が離婚し、父親と一緒に北海道で暮らしている小学生の純と蛍。
母親が病気で亡くなり、葬儀のため東京に行った2人。
あまりにも2人の靴がくたびれていたので、
母親の恋人の男性は新しい靴を買ってあげる。
その際、古いくたびれた靴を捨ててしまうのだ。

しばらくして2人はあの靴が貧しい中、
父親が、なけなしのお金で買ってくれたものだということを思い出した。
お父さんの思いがこもっている靴。

2人は靴を捨てたところに探しに行く。
しかし、ごみ収集車が来た後なのか、靴が見つからない。
ごみを漁っていたら警官から「お前たち、何をしてるんだ!」と怒られる。
2人が事情を説明すると、警察官も感じるところがあったのだろう。
一緒に探してくれるのだ。
切ないシーンだった。

捨てられる、その前に、何とか残せないだろうかと一生懸命考えていた。
結局、今の新しい書棚をリサイクルに出して、そこに籐の食器棚を置くことが閣議で決まった。

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