【朝礼】1人が気になる
9年間、短大の非常勤講師をしていました。今月2月3日の授業を最後に、退職しました。
実は、1年前に辞表を学長に提出したのですが、
学長から「あと1年やってくれないか」とお願いされました。
なぜなら「今の学科があと1年で終わるから」という説明でした。
そういえば、数年前、短大の看板だった音楽科も時代の波に呑まれ、廃止されました。
学生が集まらないからです。
僕が今まで教えてきた学科もなくなるのかなと思って、
それなら最後の1年を勤めようと引き受けました。
そもそも、辞めようと思ったことは、9年間の中で何度かありました。
僕としては一生懸命準備して講義に臨むのですが、
学生のやる気のない態度に、こっちのテンションが下がるわけです。
本当は、学生にやる気がないわけではなく、それが普通なんです。
反応しないのも普通で、おしゃべりするのも普通で、
居眠りするのも生理的現象で、やる気がないわけではないんです。
だから、一般的に大学の先生って大変だなぁって思いました。
大学の先生は自分が「大学の先生」という自覚があるので、
「大学は勉強するところ」と思っています。
でも、学生は意外とそうでもなく、単位をもらうために講義に出席している子が多いです。ですから、授業態度は積極的であるはずがないわけです。
自分の大学時代もそうでした。
今振り替えると、随分大学の先生に失礼な態度を取っていたと思います。
僕の講義は、1週間に1コマ、「実践ビジネス論」だけでした。
26年度の履修は18人でした。
少ないので、1人でも授業態度の悪い子がいると、すごく目立ちます。
今振り返ってみると、9割方、授業態度はよかったのです。
1割の、態度の悪い子が目に入っていただけなのです。
実際、彼女たちは19歳なので、基本、素直です。
素直すぎて、授業の最後に「今日の講義の感想」を書いて提出してもらっていたのですが、みんな素直に受け止めています。
問題は「今日の授業内容は納得できない」と書いてくる子や、ちょっとシラけている子です。そんな子が1人、2人いるんです。
1年間の最後に、学生が先生を評価するアンケートがあります。
10項目くらいあって、その中に「この授業を受けてよかったですか」という質問があるのですが、9割が「よかった」「ややよかった」と書いてくれていました。
ところが、1人、「この講義を受けてよかったですか」という質問に「よくなかった」、もう1人は「ややよくなかった」という回答があったのです。
これになぜかショックを受けるんですね。
9割の子が「よかった」と答えているんだから、上等じゃないかと自分に言い聞かせて、自分で自分を慰め、励ますのですが、「よくなかった」と答えた2人が気になって仕方がありません。
受け止め方は10人いれば10人とも違うわけで、そりゃ1人、2人くらいはひねくれた人もいるでしょう。
ただ、もしかしたら、この1人、2人が実はすごくまともな賢い子で、僕が未熟であることに15人は気が付かなかったけれど、あの2人は、僕の未熟な講義を見抜いていたのではないかと思ってしまうわけです。
実際、僕の講義は本当に未熟でした。
一方的にパワーポイントを使ってしゃべっていました。
自分では、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の「白熱教室」みたいに、学生とコミュニケーションをしながら、学生に考えさせる講義をしなくては・・と思うのですが、なかなか思うような講義はできませんでした。
つくづく、講演はできるけど、授業は全然ダメということを思い知らされました。
さて、話は変わりますが、人間は、体の一箇所が痛んだり、調子が悪いと、そこに集中しますよね。
たとえば、胃が痛いと、もう何も手につきません。
体の部位が300あるとして、299は全然健康なのに、1箇所だけ痛いと、そこだけに意識がいってしまいます。
健康に頑張ってくれているほかの299の部位に感謝せず、異常な胃を何とか治したいと思うわけです。
それから、マスコミって、日本は平和な国なのに、どこかで殺人事件があると、そこを大きく報道します。
世界中で平和に暮らしている人が大勢いるのに、一箇所で紛争があると、そこにマスコミは集中します。
1箇所が問題なのです。
異常だから、集中するのです。
「昨日、北海道の山田さんの家では、家族5人が全員揃って夕食をとったそうです」なんて報道はあり得ません。
それが極めて珍しく、稀有なことになっている社会だったら、そんな報道もあり得ます。
つまり、平和であることは気にならないのです。
正常ではない1箇所が気になるのです。
40人学級でも1人が暴れる子だったら、もう授業が成り立たないという「学級崩壊」が数年前に問題になりました。
どうしても1人が気になるのです。
聖書にも「99匹の羊」の話があります。
1匹の羊が迷子になったら、99匹を置いて、その1匹を探しに行くという話です。
みやちゅうのスタッフは今12人ですけど、1人が歩調が合っていないと気になります。
1人が病気になると気になります。
今日は、「やっぱり1人が気になる」という話でした。
いろんな意味を含んでいます。
受け止め方はみんな違うと思います。
今日も一日、朗らかに、安らかに、喜んで働きましょう。