今日一日だけね。
とある書の達人がいました。実に味のある書を書かれます。
何十年と書道の道を歩んできたのは間違いありません。
ところが、その達人は言います。
「いやいや、一日一回だけでいいんです」と。
どういうこと?
こういうことらしいです。
子どもの頃、少年は書道を習っていました。
それはそれは下手くそで、いつも先生から朱色の訂正がたくさん入っていたそうです。
それで先生からこう言われます。
「一日十枚青書しなさい」
次の日十枚だけ書を書きました。
その次の日も十枚だけ書きました。
その次の日も十枚だけ書きました。
その次の日も十枚だけ書きました。
その次の日も十枚だけ書きました。
こうして50年、60年、70年
やったことは一日十枚清書しただけです。
一日24時間と一つの身体は
すべての人に、平等に与えられた条件です。
人間の「差」はどこで生まれるのか。
今日一日だけでいいからやることを決める。
それを明日もする。
その次の日もする。
「毎日」するのではありません。
「今日一日だけ」するのです。
「毎日続ける」と思ったら続きません。
「今日一日だけする」と思って日々を過ごすんです。
実は私たちはそれを実践しています。
子どもの頃、人生という階段を見上げて、
「階段、長いなぁ。80段もある」と思って上ってきたわけではありませんよね。
今日はこの一段だけに一生懸命生きてきた。
明日は次の一段を上った。
気が付いたら50段も上っていた。70段も上ってきた。
そんな感じです、人生って。
今日一日、今日だけ、でいいんです。