水谷もりひとブログ

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人は何ゆえに憧れるのか。

いやぁ、この方の思想、そして文章にはしびれる。
文筆家の執行草舟さん。『憧れの思想』である。

まずは『魂の燃焼へ』という対談本(執行さん×清水克衛さん)の中で、執行さんはこう語っている。

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「『忍ぶ恋』が大切。恋っていうのは憧れ。
憧れに向かって生きるのが恋です。

簡単に手に入る女性ではだめなんです。
絶対に手に入らない人を、自分の憧れの女性にしなきゃだめ。
自分より身分が上で、美しくて、お金持ちの女性。
そういう人に死ぬまで憧れ続ける。
相手の女性にも「自分の憧れの人にしていいですか?」と打診して
「いいよ」って許しが出たら憧れの人にすることができる。

到達できるような憧れはだめ。
人生は、憧れながらもだえ苦しんで死ななきゃだめ。

性欲なら成長すりゃ出てくるけど、それと恋愛はまったく別物。
明治の志士だってみんな女遊びをしていた。
それと恋はまったく別なんだ。恋は精神的なものだから。

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そして、新刊『憧れの思想』の冒頭で執行さんはこう述べている。

憧れには、人間の実存のすべてがある。
人間とは、憧れのゆえに生き、憧れのゆえに死する存在なのだ。
憧れは、燃えさかる悲しみである。
つまり、それは、我々人間が生きるための本源的躍動ということに他ならない。
人間が生き、そして人間が死ぬ。
それは憧れのもとに行われなければならない。
憧れのない生命は、人間の生命ではない。
人間の尊厳とは、この憧れの中に存しているのだ。

我々人間は、憧れに向かう生き方がなければ
人間としての生を全うすることはできないのだ。
憧れに向かって我々は初めて真の人間と成る。
少なくとも私はそうであった。
憧れだけに生きることを決めたとき、私は自分が人間になったことを実感した。

その思索と体験を本書(『憧れの思想』)の中に語り尽くしたい。

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というわけで、この本を読むと、それだけで生命が震動を始める。
読む人が自己と対面する。
「自分が何者か」、それが分かるという。
恐るべき本。