水谷もりひとブログ

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執行草舟著『脱人間論』

『脱人間論』<1>

人間とは何か。
なぜ今さら執行さんはこの問いを投げかけたのか。
それは人間のかたちをしているものの、
人類はもはや人間ではなくなっているからである。

執行さんはこの問題に答えるために
「まず人類誕生のところから語らねばならない」と言う。

現人類は、その誕生から数えて数十万年を経過している。
あるとき、人類は気がついた。
人間以外の生き物がいることを。
そこで初めて人類は、自分たちが人間であることを知った。
人間という概念が生まれたのである。

一般的に男という概念は女がいることで生まれた。
「上」という概念は「下」があってこその「上」である。
「右」もそうだ。「東」もそうだ。

人間は、動物を見て「自分たちはこいつらとは違う」ことを悟ったのだ。
何が違うのか。
やっぱりそれは「文明」だろう。

文明が生まれたのだ。

四大文明の生成は人類史に大きな衝撃をもたらした。
当時から今に至るまで、受け継がれた文明が農業である。

では、四大文明が誕生する以前。
人類は気が遠くなるほどの長い期間、何をしていたのだろうか。

ホモ・サピエンスが登場したのが40万年前から25万年前くらいだといわれている。
人類の先祖のヒト科の古代人類が登場したのが200万年くらい前。

おそらくその気の遠くないほどの年月の間、
ヒトは他の動物と違う存在としての「自覚」を
創り上げていたのではないか。
つまり、人間という「存在」であろうとしたのだ。

それ以前は、人とサルとの境があいまいだった。
ヒトは他の動物と同じで、自然界の一部だった。

ホモ・サピエンスは自分たちが人間であることを自覚した。
これが他のヒト科の古代人類と違うただ一つの真実である。

続く