水谷もりひとブログ

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執行草舟著『脱人間論』2

『脱人間論』<2>

人間とは何か。~なぜ今さら執行さんはこの問いを投げかけるのか。
それは現代人がもはや人間ではなくなっているからである。

執行さんはこの問題に答えるために
「まず人類誕生のところから語らねばならない」と言う。

古代人類が登場したのが80万年から30万年前。
ネアンデルタール人は40万年~3万年前。
ホモ・サピエンスが登場したのが20万年前だとすると、

文明が発生したのは古くて紀元前5000年(エジプト文明)
新しくて紀元前2500年(黄河文明)。

何が言いたいのかというと、
ホモ・サピエンスが登場してから文明が生まれるまでの約19万3000年間、
人類は何をしていたのか、ということだ。

それを執行さんは「人間としての自覚を創り上げていた」という。
人間としてのアイデンティティを確立するのにそれくらいの年月が必要だったと。

あの時代にヒトは人間になったのだ。
それは、彼ら文明以前の人類がやった最大の功績である。
つまり、他の生き物、他の種と決定的に違うものを見つけたのだ。

何を見つけたのか。

執行さんはそれを「愛」と突き止めた。
「愛」を認識したことでヒトは人間になった、と。

古代遺跡に残された「死者を埋葬した碑石」がそれを物語っている。
人間は、身近な人の死を悲しみ、嘆き、その亡骸を埋葬し、
人間を越えた存在に祈った。

人間はもうすでに人間を超えた存在を知っていたのだ。
ヒトが人間になるために費やした20万年近い年月の中で
人間は肉体と魂からできている存在であり、
その本質が愛であることを本能的に確立したのだ。

それが文明をつくる土台になった。
そしてエジプト、メソポタミア、インダス、黄河、アンデス、インカ、マヤ、古代日本といろんな文明が生まれた。

人間の叡智が文明をつくった。
しかし、皮肉なことにその文明が人間を歪め、魂を退化させた。

文明が発展し続けると、人間は魂の声ではなく、
肉体の欲望の声を聞いていく。

文明そのものに心を奪われてしまう。
いつの時代もそうなのだ。

続く