二次災害ということ
「二次災害は心の中で起きる。」その青年はトラックの運転手。
赤信号で止まっていた。
青になったので動き出した。
気が付かなかった。
2歳の男の子がトコトコとトラックの前を横切ったのを。
男の子は亡くなった。
意図してやったわけではないが、青年は過失致死で逮捕された。
2歳の幼児ということは近くに保護者がいたはずである。
この場合、親の過失致死は問われないのだろうか。
幼児を連れて公道を行く場合、手を離してはいけないくらい常識だろう。
青年は加害者であり、被害者でもある。
その後、彼は重労働の現場に配属になった。
しがし心の苦悩を忘れられるが、労働を終えると
事故の記憶がよみがえり、パニックになった。
彼を支え続けたのが、裁判の時に彼を担当した弁護士だった。
「なぜこうなったのかと思い悩めば、心の中に二次災害を引き起こす。
だから過ぎ去ったことは考えないように。
つらい出来事にも深い意味がったと、いつか気付く日が来る」
そう言って励ました。
弁護士は知っていた。
事故を起こした自責の念で心の二次災害、三次災害を引き起こし、
人生をメチャクチャにしてしまう人たちがいることを。
その弁護士も交通事故で老人を死なせた過去があった。
新聞記者をしていた頃だった。
自分と同じ悩みで苦しむ人を救おうと、
新聞記者を辞め、弁護士になったという。
「この苦しみには、もしかしたら自分では知り得ない深い意味がある」
この気付きが人生を変える。
『1日1話読めば心が熱くなる365人の教科書』に取り上げられていた作家の鈴木秀子さんの話より。