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くるみの談話室 3056号(2025/01/27)
人として美しく生きるって?

会長 松田くるみ
 講演会を取材させていただいて三十余年。時々取材に行った特派員から直接、講師の先生を紹介してもらう機会があります。令和5年4月10日号に掲載した、徳川家の末裔で、大日本茶道協会会長の松平洋史子先生もそのお一人。東京の惟住特派員と一緒に、お茶の指導をいただきました。

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 松平先生のお点前の仕方は「どこでも茶室」です。その日の茶会は東京のビルの会議室でした。茶道に必要なものはすべて携帯しています。一輪挿しの花瓶、その日の掛け軸、抹茶椀も陶磁器ではなくうるしを塗った茶器で、徳川の御紋がしつらえてありました。海外にも持っていってお点前を披露されるそうです。

 二回目にお会いしたのはお食事会でした。その時、聞く姿勢について話されました。話は耳で聞くのではなく、懐(ふところ)で聞くというのです。

 「その際、女性は脇に卵を立てて挟む感じの空間を意識して作ってみてください。男性なら卵を横にしたぐらいの空間を脇の下に作ります。そうすると美しい姿勢で人の話を聞くので、話している人から見ても素敵に見えます」。確かにやってみると、懐でその人の話を受け止める感覚になりました。

 食事会の後、松平先生と東京駅までご一緒したのですが、その際に私は「この後、お客様と会う約束があるんです」と話しました。駅に着くや否や松平先生は、「松田さん、あそこにお手洗いがあります。荷物を持っていてあげますから行ってらっしゃい」とおっしゃったのです。お礼を言ってお手洗いに行ったのですが、先生を待たせてはいけないと思って、急いで出てきました。

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 先生と別れた後、私はとんでもない勘違いをしていたことに気付きました。先生は私がお手洗いに行きたいと思っていることに気付いたわけではありません。実際、私はお手洗いに行きたかったわけでもないのです。なのになぜ「お手洗いに行ってきなさい」とおっしゃったのか。私がこの後、お客様に会うことを知って、「化粧直しをしてきなさい」とのことだったのです。なのに私は口紅も直さないまま飛び出してきました。そしてその顔のまま次のお客様とお会いすることになってしまいました。

 松平先生の心配りを無駄にしてしまったのです。人として美しく生きていないことに気付き、これからも松平先生にご指導いただくことに決めました。

 4月29日、品川で松平先生の講演会があります。私はその時、先生のお点前のお相手をさせていただきます。どうぞご参加ください。詳細はコチラ

(会長/松田くるみ)


〇松平 洋史子 著 『余韻の残る美人になる 気品の作法』(大和書房)

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