くるみの談話室 2875号(2021/03/15)
英語を通して日本語を学ぶ
会長 松田くるみ
先月27日、浄土真宗の僧侶、大來尚順(おおぎ・しょうじゅん)さん(2019年10年7日から連載)をお招きして講演会を主催しました。大來さんは、龍谷大学を卒業後、米国仏教大学院に留学。その後、ハーバード大学神学部の研究員となり、帰国後は翻訳や通訳をされていました。現在住職を務める超勝寺は、山口市にある約400年続くお寺で、今年2月にお寺を継ぐため東京から戻られたそうです。
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翻訳・通訳の仕事を通して大來さんは、昔からある日本語には仏教精神が宿っていることに気付きました。しかし、日常会話の中で言葉が形骸化し、その精神が分からなくなったと言います。
講演の中で、ある社長さんの「お蔭様で、わが社は50周年を迎えることができました」という話をどう英訳したかという話をされました。
「お蔭様」は、英語で3つの言い方があります。①「Because of you」(あなたのせいで)。②「Due to」(~が原因で)。そして③「Thanks to」(~に感謝して)ですが、「どれも違うなぁ」と思ったそうです。
「お蔭様」の「蔭」は目に見えない存在です。その前後に「お」と「様」が付いているので、神仏を意味していると分かります。なのでこの場合、「目に見えないお働きによってわが社は50周年を迎えることができました」となり、英訳すると「By invisible working」「By invisible power」となります。でもそのまま伝えると、聞いた人がびっくりするので、モヤモヤしながら「Thanks to you」(皆さまに感謝して)と訳しました。
人は何かを成し遂げた時、「それは自分がやった」と言いたくなるものですが、その驕りをかき消す言葉として、「お蔭様」という言葉が仏教から生まれたのだそうです。
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私も今、英語を習っています。黒田律子先生は「言葉は文化です。直訳しないで意味を考えて」とよく言われます。
例えば、平家物語の冒頭の「諸行無常」の英訳は「Everything is changing」です。英語のほうが意味が分かりやすいです。「私は英語を通して日本語を教えています」と黒田先生。
「寝た子を起こすな」―農耕民族の日本人は、赤ん坊を寝かせ籠に入れて田んぼの畔に置きました。起きると仕事ができなくなるので「起こすな」と言っているのですので、英訳は、「Don‘t wake up the sleeping child」でもよさそうですが、狩猟文化圏の人には「Wake not a sleeping lion」(寝ているライオンを起こすな)とか「Let sleeping dogs lie」(寝てる犬はそのまま寝かせとけ)となります。
英訳してみると、言葉は「言語」ではなく「文化」であることがよく分かりますね。
(会長・松田くるみ)
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2875号