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くるみの談話室 2501号(2013/04/01)
ふろしきづつみの奇跡

本紙代表 松田くるみ
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 先日、岩手県の小松美幸さんから『ふろしきづつみ』というタイトルの絵本が贈られてきました。ご主人の則也さんのご家族が体験した「3・11」の物語です。お母さんのフスミさん(80)が「こんなごどあったんだよ」と語り手として伝える形で書かれてあります。

◎          ◎


 あの日、小松さんの妹さんとお母さんは、胸の手術のために入院していた85歳のお父さんの病室にいました。

 突然の激しい揺れに2人はお父さんのベットにしがみつきました。揺れが収まり、テレビをつけたら大津波警報が出ていました。しかし、病室は4階なので、ここまで津波が来るとは思いもしなかったそうです。数分後また大きな地震。その直後、病室の窓から大きな津波が病院へ迫ってくるのを見ました。

 津波はまたたく間に4階の病室まで押し寄せて、お父さんのベットのマットはボートのように浮きました。お母さんと妹さんはお父さんにしがみつきました。天井近くまで波が届いたとき、妹さんは叫びました。「もうだめだ一緒に3人で死ぬべ~」。お母さんも負けじと叫びました。「なーに、まだ死んでられるって。生きねがねえぞ、勝子」

 そのとき、ふろしき包みが流れてきました。お母さんが入院用に持ってきたお父さんのパジャマと毛布とひざ掛けが入っていました。天井まであと少しのところで波は引き、3人は命を取り留めました。

 不思議とふろしきの中は濡れていませんでした。その毛布でお父さんをくるみ、2人でお父さんを温めながら、3人はその夜、病院の屋上で一夜を過ごしました。

 翌日、お父さんは、自衛隊のヘリで別の病院に搬送されました。

◎          ◎


 ところが、その後、お父さんがどこに搬送されたのか情報がありません。家族総出で必死に探しました。ラジオでも呼び掛けました。1週間後ようやくお父さんのいる病院がわかりました。

 実は、その頃、みやざき中央新聞の編集部では、手分けして東北3県の読者さんの安否を電話で確認していたのです。

 小松さんの家に電話した時、ちょうどお父さんが見つかった日で、電話口で喜んでいらっしゃったのをよく覚えています。でも、こんな大変なことが起きていたなんて、その時は思いもよりませんでした。

 絵本は、「震災を忘れないように」「あの日、病院で起きたことを伝えたい」「亡くなったお父さんの供養に」との思いからフスミさんが自費出版したものです。

 その後、地元マスコミから取材を受けたり、自分の体験を話すことで、フスミさんはどんどん元気になっていったそうです。
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