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くるみの談話室 2617号(2015/09/21)
涙味の野菜スープ

本紙代表 松田くるみ
 先月、柴田秋雄/瀧森古都共著『日本でいちばん心温まるホテルであった奇跡の物語』の出版記念パーティに出席してきました。映画『日本一幸せな従業員をつくる』の舞台となった、ホテルアソシア名古屋ターミナルでの物語です。

 倒産寸前のホテルの経営を任されたのが柴田さんでした。普通なら起死回生のためホテルのリニューアルにお金を使うのに、柴田さんは自信を無くしている従業員の教育にお金を使ったのです。そして、暗かった社員食堂を一番最初にリフォームしました。

 「従業員が幸せになることで、その先のお客様が幸せになる」と柴田さん。

 その後、ホテルは連続の黒字に転じました。その過程でいろんな物語が生まれました。その一つが「涙味のスープ」です。

◎          ◎


 愛子さんが小学生のとき、大雨で川が氾濫しました。愛子さんのお父さんは濁流に流された近所の子どもを助けようとして、一緒に流され、亡くなりました。

 母子家庭となり、生活は一変。彼女は、「成績が悪いのは貧しくて塾に通えないから」と自分に言い訳をしていました。

 お母さんは工場からもらってくる野菜の切れ端で作ったスープをよく夕食に出していました。愛子さんには、それが貧しさの象徴のように思えて、大人になってからも野菜スープは大嫌いでした。

 高校を中退後、何度目かの面接でようやくホテルアソシア名古屋ターミナルに入社できました。面接のとき、「親孝行がしたい」と言った彼女の優しさを信じた柴田さんは学歴で判断しませんでした。

 領収証を切るとき、お客様から「まえかぶにして」と言われ、本来なら「㈱会社名」なのに、「まえかぶ様」と書いてしまい、激怒させてしまったこともありました。でも、上司が彼女を叱ることはありませんでした。そこで彼女は一つ学んだのですから。

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 2000年9月、東海豪雨が起きました。そのとき、ホテルは名古屋駅に残されたたくさんの帰宅難民を招き入れたのです。

 ロビーは100人以上の人で溢れました。ありったけの椅子を並べ、毛布を出してビスケットと紅茶を配りました。

 「不安な夜を過ごす人たちに、温かいものを差し上げたい。何がいいだろうか」と悩む総料理長に、愛子さんはふと野菜スープを思い出し、提案しました。

 出された野菜スープを愛子さんも飲みながら思わず涙がこぼれ落ちました。

 「材料は違うのにお母さんの味がした」と愛子さん。そして、たくさんの人の喜ぶ顔を見て、彼女の野菜スープの思い出が塗り替えられたのです。

 誰もが持っている心の中のつらい思い出。それが、ふとしたことがきっかけで温かい思い出に変わることがあるんですね。

 みやざき中央新聞もこんな物語に溢れる会社にしたいと思いながら、柴田さんの新著を読みました。
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