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くるみの談話室 2452号(2012/03/19)
ご縁を感じたらピンポイントで支援

本紙代表 松田くるみ
 先月、みやざき中小企業経営フォーラムで、岩手県陸前高田市にある八木澤商店の河野和義(こうの・かずよし)会長が講演されました。

 八木澤商店は今年で創業205年。醤油や味噌を昔ながらの製法で作り、農林水産省の醤油品評会では日本一に。河野さんは8代目で、息子の通洋さんが9代目社長です。

 1年前の津波で八木澤商店は工場もろともに全壊。操業回復の見通しもない中、通洋さんは、従業員を1人も解雇しないと決めました。でも、仕事がありません。このままだと心が病んでしまいます。そこで無事だった2台のトラックで支援物資を運ぶボランティアを始めました。それを仕事として給料を払いました。「200年間お世話になってきたお礼です」と言って避難所を回りました。

 さらに通洋さんは、4月から採用が決まっていた2人の新入社員を入社させる決意をしました。会長は猛反対し大喧嘩になったそうです。しかし通洋さんが「おやじ、今まで何を教えてきた。大事なことは正直であること。そして約束を守ることだろう」と言うと、会長も息子の決意に敬服しました。

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 そんな話がマスコミで放送された数日後、神奈川で工務店を経営されている見知らぬ男性が、100万円の札束を数束持ってきて、「これを使ってくれ」と。「こんなに受け取れない」と会長が言うと、「俺にも家族同然の従業員がいる。みんなの給料にしてくれ」と話し、別れ際に「お礼状は送らないように。家内に内緒だから」

 しばらく他社にレシピを教えて八木澤ブランドの醤油を作ってもらっていましたが、やはり職人集団の会社です。もう一度自分たちで作りたいという想いが募ってきました。

 そんなとき岩手県水産技術センターに預けていた八木澤商店の「もろみ」が、がれきの中から見つかりました。これさえあれば、また自分たちの醤油が作れます。

 しかし、八木澤商店の目玉商品は2年以上熟成させたもろみから作る生揚(きあ)げ醤油です。今からもろみを仕込んでも商品になるまでに3年はかかります。

 そんなとき秋田県にある安藤醸造という同業者が、「今八木澤を助けないと男じゃない」と言って、会社にとって命ともいえる2年熟成のもろみを惜しげもなく、「八木澤の名前で作って売ってくれ」と贈ってきたのです。

 震災から1年が過ぎ、これからどう支援していいのか途方にくれている人もいると思います。ご縁を感じたらピンポイントでそこを応援する方法もあります。

 河野さんは『セキュリテ被災地応援ファンド』を紹介されました。興味のある方はネット検索してみてください。
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