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くるみの談話室 2436号(2011/11/14)
家庭の中で家庭科を…

本紙代表 松田くるみ
 『男と女の夢未来』(鉱脈社)は水谷と松田くるみの共著です。もう絶版になってしまいましたが、東京講演会の懇親会で私が執筆したエッセイをコピーして配布することになり、久しぶりに読み返してみました。

 その中に私が私立高校で家庭科を教えていた話を載せています。ちょうど家庭科の履修が男子にも課せられることになった最初の年でした。非常勤だったのですが、初めて高校教師を体験しました。高校生の言動があまりにも面白くて、その日常を書き留めていたのです。

     
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 「こらぁ、そこの男子、家庭科の時間よ!」がそのタイトルで、言葉どおりいつも叫んでいました。あるとき、たんぱく質グルテンの実験で、強力粉に水を入れてこねると、強力粉のグルテンが粘りを出して箸に巻き付きます。いつもうるさいK君を静かにさせるためにその役をお願いしました。数分後、「オーッ!」と歓声が上がりました。男性器そっくりに練り上がっていたのです。K君がみんなに見せびらかしたのは言うまでもありません。

 礼儀作法の授業は茶室で行なっていました。まず「瞑想しましょう」と言って、全員黙想させました。そのとき、1人の男子が茶室の隅にあった鐘を「カーン、カーン」と鳴らして、「空襲だ!」と叫んだのです。静寂が大爆笑になりました。そんな場面が一つひとつ蘇ってきました。

     
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 家庭科は生活の基本を学ぶ教科です。でも、調理実習は年4回ほど。生涯食べることを考えると少な過ぎます。与えられた時間では伝えきれないもどかしさを感じていました。せめて「家庭科は家庭の中で教えるのが一番」と思い、保育園児だった我が家の娘たちには意識してそのつど細かく教えていきました。

 味噌汁は削りかつおから取った一番だしを使い、残りは煮物などに二番だしに使っています。かつおの香りが広がるときに幸せを感じる私です。きんぴらは、醤油3・酒1・砂糖2、この割合が我が家の味付けの基本です。食卓を囲むときには意識して「おいしいね」と言うようにしていました。

 以前レストランの店長さんに「私は外で食べる味より自分の家の味が一番美味しいと感じるの」と話したら、「誰でもそうですよ」と言われて、納得したことがありました。

 それから、新婚の友人がそのお母さんから、「早く旦那を自分の味に慣れさせなさい。そうすればちゃんと帰ってくるから」と教えられたそうです。まるで故郷の川の匂いを知る鮭のようです。慣れ親しんだ味に惹かれて戻ってくるのは人間も似ていますね。 

       
 (本紙代表・松田くるみ)
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